No.17 北斗神拳の治癒能力を考察する(2004/2/2)

  経絡秘孔を突くことにより、相手を内部から破壊する究極の暗殺拳、北斗神拳。こんなに派手な死に方の死体が残った日には、暗殺には役立たないのではないか、という突っ込みはご法度。ところで、秘孔の突き方によっては、病気の治癒にも使えるという設定もある。北斗神拳を医学に役立てようとしたトキはもとより、ケンシロウ、ラオウ、バランも、北斗神拳を治療に使っていたことがある。

 では、北斗神拳はどんな病気に有効で、どんな病気に無効なのか、いくつかの代表的なシーンを参考に検証してみたい。

1. 心因性失声(有効。治療者:ケンシロウ 患者:リン)
第1話の有名なシーン。両親を目の前で殺されたため言葉を失った(バット談)幼女リンの秘孔を押し、“心の叫び”と共に、言葉を取り戻した。治療成功。「心因性失声」と診断した根拠はバットの証言。強い心理的ストレスで発生できなくなるのが「心因性失声」である。器質的障害は無く、専ら精神的な要因で発症する。(一方、「失語症」は 大脳の病変による言語障害なので、全くの別物)。どうやら、心に起因する病気に北斗神拳は有効らしい。
2. 失明(有効。治療者:ケンシロウ 患者:アイリ)
アイリは、奴隷となった我が身の立場に絶望して自ら薬品を目に掛けて、光を閉ざした、とある。薬で眼球が損傷しても直るということですか?北斗神拳凄すぎ。ところが、眼球を自らの拳で損傷したシュウについては、北斗側の人間は誰も治療しようとはしなかったので、原作中の描写には矛盾が存在するような気もする。薬はO.Kで完全な物理損傷は治せない、ということだろうか?
3. 急性毒物中毒(無効。治療者:ケンシロウ 患者:少年リョウ)
サウザー編から。レジスタンスのメンバーの息子リョウは、サウザー率いる聖帝軍の策略により毒入りの食べ物を食べてしまう。極めて短時間で痙攣、吐血等の症状が現れていたので、毒物は青酸あたりだろうか(青酸で吐血するかどうか疑問だが…)。ケンシロウは即座に苦しむ少年の元に駆け寄り秘孔を押すが効かず、「う、もはや…」と言って治療を断念。「もはや」ということは、苦しみ始める前とかだったら治療できるということだろうか……北斗神拳ならできそうな気がする。
4. リウマチ(有効。治療者:トキ 患者:老人)
ラオウvsトキ戦のあとのリュウガ編から。リウマチかどうかは断定できないが、雰囲気でそう診断してみた。この病気の原因は完全には解明されていないそうだが、何らかの原因で「免疫」に異常をきたすことがきっかけだとか。だとすれば、秘孔を突いて、血行を良くし、新陳代謝を高める治療は有効に思える。北斗神拳の得意分野と言えよう。しかし、この老人は、トキに病状軽快を報告した直後、リュウガの弓矢に射られてしまうのだった。哀れなり。
5. 放射線障害(無効。治療者:ラオウ 患者:ユリア)
診断の根拠は、ラオウの「うぬもトキと同じ病を?」との台詞。結局、ラオウはユリアの秘孔を突いて仮死状態とすることにより、病状を停止させ、数年の命を与える。根治を目的としない延命療法にすぎない。ゆえに、北斗神拳は放射線障害には無効であることが判る。トキが自らを治療しなかったことにも符合する。
6. 新生児無呼吸(有効。治療者:バラン 患者:新生児)
病気の原因は、主に新生児特有の肺の形成未熟。放置しても必ずしも死に至るとは限らないが、その場合でも脳障害を起こすので要注意。バランの治療は、秘孔を突くことによって、呼吸筋や血液循環を活性化させることだと推測される。ここまでの考察で、北斗神拳は心因性疾患、呼吸器・循環器疾患には有効で、放射線障害や、物理的な負傷には無効であることが判った。アイリの眼のことは少々引っ掛かるが、それを除けば北斗神拳って結構現実的かな、とも思えたのだが…
7. 全身の重度の外傷(有効。治療者:ケンシロウ 患者:バット)
最終話になって、ついにやらかしてしまった、という感じ。ボルゲの執拗なリンチ(凄いシーンだ!)によって全身がボロボロになったバットは、一旦息を引き取り、ケンシロウは村を立ち去るが、実は既にケンシロウはバットの秘孔を突いており、バットはどうやら蘇生したらしい。んあ〜、物理的な怪我がツボを突いて治りますか? しかもそれまでの諸描写とも矛盾しているし。個人的には、最終回でのバットの蘇生は余計だった気がする。

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