No.31 無抵抗村の村長(2004/7/1)

 拳王軍の襲来に対しても全く抵抗せず、笑顔で食料を差し出す村の長。ラオウに「何故抵抗せぬ?」と問われ、「抵抗は相手の力を生みます。無抵抗は力なき者にとっての唯一の武器」と答えたため、ラオウの逆鱗に触れて撲殺される。

 この老人については、見る人によって様々な評価ができそうだ。

 まず、ラオウが拳法家でも部下でもない者を殺す場合があることが明らかになった。やはりラオウは残酷な奴だ、との評価もあり得るし、このとき以外に直接的に殺していないではないか、との評価もあり得る。人それぞれ。

 村長が提唱する独特の無抵抗主義についても評価は様々だと思う。抗戦もせず、素直に服従するでもなく、単に延命を図るだけの中途半端な思想ではいけない、という意見もあり得るし、そうでもない、という意見もあり得るだろう。主義はどうあれ、無抵抗の人間を殺してしまうラオウはDQN、という感想も考えられる。

 これほどに様々な見方が存在し得る背景には、政治的な思想が絡んでいることがあるのではないか。「万人に受け容れられる政治的判断や思想は存在しない」と私は思っている。この村長の他に、政治的な発想をする登場人物といえばコウケツが該当すると思うが、どちらも物語中では不遇な最期を遂げている。

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