No.43 「北斗の拳」世界での経済状況(2004/8/2)
よく知られているように、「北斗の拳」は大規模な核戦争により文明がほぼ消滅した後の世界、を舞台にしている。言うまでもなく、(少なくとも現時点では)架空の設定。「北斗の拳」関連スレがSF板にも立っているのもむべなるかな。
では、この世界の住人たちはどのような経済状況で暮らしているのであろうか。連載初期には、確かに物々交換が行われている。また、大規模な食糧生産が行われている形跡はなく、慢性的な物資不足は深刻だったはずだ。日本にあてはめると第2次世界大戦直後に近いだろうか。しかし、当時の日本よりも「北斗の拳」世界の方が遥かに甚大な被害であるため、復興は相当に困難と考えられる。
それにしても、オートバイが結構多数存在するのは不思議なのだが…
治安面でも、放置しておけば正に無政府状態だったであろう。その状態を強大な個人的拳力を背景に全体主義的に統治しようとしたのが、シン、サウザー、ラオウ、カイオウといった人々であった。しかし、ケンシロウは全体主義が嫌いなのか、最終的に彼らを全員抹殺してしまった。もちろん殺された連中にも非はあったろうが、まったくの混沌状態に楔を打ち込まんとする試みは一定の評価を与えて然るべきだと思う。
時代は下って、いわゆる天帝編の中央帝都。ここでは驚いたことに貨幣経済が確立している。貨幣単位はジュドル。しかも「貧富の差が広がっていた」とあるので、明らかに単純な物々交換経済などではなく、資本主義経済復興の兆しが見えるのだ。ところが、最終的にはやはりケンシロウに潰されてしまう。この際、実質的な支配者のジャコウを抹殺する代わりにまともな人物を為政者に据えれば帝都の未来は明るかったであろう。ところが、ファルコの用意した起爆装置によって、帝都そのものが崩壊してしまった。ケンシロウもファルコもこの点では聊かお馬鹿ではないか。
結局この後、世界は再び原初的経済体制に逆戻りしたに違いない。支配者に相応しくない人物を次々と葬り去った正義の味方ケンシロウの業績は素晴らしいものなのだが、経済面に限定して考えるならば、彼が“世紀末救世主”に相応しいかどうか、大いに疑問が残るのである。