No.52 名も無き修羅(砂蜘蛛)(2004/8/20)

 「修羅の国」とは、ファルコの言によると、

その国を統治するものは武の掟。そこには北斗元斗南斗の源流となった四千年の歴史をもつ拳法があるときく。男子の生存率は1%。

とのこと。これを聞くと、いかにも凄そうである。そのような期待感をより強めてくれたのが、今回とりあげる「名も無き修羅」である。

 かつて15歳にも満たない程に幼い頃、赤鯱の部下100名をあっという間に殺害。そして、修羅の国に渡ったファルコに致命的な重傷を負わせた。いかにファルコの義足が折れるというアクシデントがあったとはいえ、メジャー拳法の伝承者が、名乗ることすら許されていない一拳士に殺されるとは驚きであった。なお、「砂蜘蛛」という通称は、彼がファルコ戦で用いた奥義の名前に由来する。砂の中に潜り込んで地中から攻撃する技である。

 最終的には、ケンシロウに刹活孔を突いてもらったファルコに真っ二つにされたが、これほどの強さの敵が雑魚とは、何と凄い国なのだ!……とこの時までは思っていましたよ。しかも、「砂蜘蛛」はルックスや技もなかなか個性的(しかも若い頃は美少年)で、忘れがたいキャラの一人でもある。

 ところが、修羅の国での話が進むにつれて、一つの疑問が浮かび上がってきた。「砂蜘蛛」より後に出てくる雑魚敵が強く見えないのだ。のみならず、彼より格上なはずの名乗り修羅の中に、彼より遥かに弱そうな者が相当居るのだ。

 果たして「砂蜘蛛」は強いのか、それとも大した強さでは無いのか。この疑問は繰り返し議論されていて、未だ結論は出ていない。議論の行方如何では、「砂蜘蛛」にボコボコにされたファルコの強さもアヤシくなってくるため、ファルコファンにとっても気が気ではあるまい。よって、この論争を“ファルコ・砂蜘蛛論争”と呼ぶことがある。

 個人的には、砂蜘蛛は相当に強いので、若年ゆえ身分は低いながらも、重要な沿岸警備を任されていたと思いたい。そして、ファルコの敗北は偶然が重なったアクシデントだと……

 実際のところは、「砂蜘蛛」は「修羅の国」の凄さを読者にアピールするためのキャラであり、その後に彼クラスの雑魚を次々と出すと話が進まなくなる、という作者の都合があった、というのが真相のような気がします。

エッセイindexへ戻る北斗スレの杜TOPに戻る