No.74 シャチ(拳法未修) vs 名前不詳の修羅(2004/12/12)
今回も、地味だけど重要だと思われるバトルを考察する。シャチが北斗琉拳を習う前、恋人レイアを殺そうとした修羅に逆上し、村人の制止を振り切って修羅に組み付き、修羅の攻撃を耐えてそのまま前進し、修羅の後頭部を建物の鉄骨のような物に串刺しにして絶命させた。
この対決は、全編中唯一相撲技術が有効に機能したバトルであることに存在価値がある。相手の胸に頭をつけて前に出る、というのは四つ相撲の基本の一つである。想像であるが、シャチは拳法未修得とは言え、常人としては運動能力に秀でていたのではないか。そして、幼い頃は相撲好きで、友達とよく相撲を取って遊び、そこでは無敵だったのではなかろうか。案外、わんぱく相撲の類に出場していたかもしれない(これは彼の体型から判断して考えにくいかも)。時代を考えると、2代目貴乃花のファンであったことも考えられる。
この闘いでもう一つ注目すべきポイントは、組み付かれた修羅がなす術なくやられてしまったことであろう。幼い頃に相撲で鳴らした屈強な若者(←決め付けて書いてます)に相撲で敗れるのは仕方がない。しかし、拳法でどうにかできなかったのだろうか?
私としては、この修羅はシャチに組み付かれた時点で打つ手がなく、敗北は必然だったと結論しておきたい。根拠は、修羅が使う拳法の性質にある。シャチの受傷シーンの観察より、この修羅が使う拳法は南斗聖拳のように外部からの破壊を目的とする拳法であることが判る(もちろん南斗そのものではないだろうが)。外から対象を破壊するには、それなりの大きなモーションや突きの速度を要するので、組み付かれては力を発揮できないのだ。現実の打撃格闘技を考えてみるとよい。多くの場合クリンチがルールで禁止されているが、これは密着してしまえば打撃の威力が無くなってしまうからである。総合格闘技の試合で、打撃しかできない選手が組み付かれたら何もできないのも同じ理由である。
仮に、この修羅の拳法が北斗系や元斗系の拳法だったら、組み止められても苦にしなかっただろう。北斗だったら秘孔を押せればそれで良し。元斗だったら“光る手”で相手の細胞を滅殺すればよいだけである。
ところで、「北斗の拳」の世界では組み技格闘技が不遇である。そもそも使い手自体が希少であり、シャチvs修羅戦は数少ない例外である。個人的には打撃格闘技よりも組み技格闘技の方を好むので、少々残念である。今後この項では、「北斗の拳」世界での組み技格闘技の位置づけについて、更なる考察を加える予定である。