ある日、新聞のTV番組面の読者投書欄で「2時間ドラマで題名に『殺人』を入れるのは気分が悪い」という意見が載っていたのを読み、「この人はきっと本格ミステリなんか読めないんだろうな」と思いました。でも、そう感じる人の気持ちも辛うじて分からないではないのです。ちなみに、私の場合、完全に虚構の世界と割り切っているので、ミステリのみならず、スプラッタ小説でも楽しく読めるのです。
今年(2004年)の私的CM大賞にノミネートされていた、「キリン生烏龍」のTVCFがいつの間にか打ち切りになりました。5月からは新CFが放送されたと聞きますが、未視聴です。キリンビバレッジのPageからは、「生烏龍」の商品pageそのものが削除されています。視聴者からの苦情が原因との噂を耳にしました。その噂は正しいと思われます。それ以外に、こんな短期間で打ち切りになる理由は考えられません。
お気に入りのCFだっただけに、もう観られないのは残念ですが、企業の立場を考えれば、苦情が相次いだ以上は、イメージ低下を防ぐための打ち切りは止むを得ないと思います。私にとってショックだったのは、そんなことではありません。
私は今年3月頃、別所の日記で、このCFを手放しで絶賛しました。
CMの中で「生こえー」と大声で叫んでいる長身の俳優の演技が出色。本当に社長の前でこんなことを言う社員が居たら面白いな、と思わせる演出もgood。
ところが、各所の日記やblogを検索してみると、この演出に不快感をお持ちの方が少なくなかったようです。たとえば、「Desert Words」というWeb日記の3月10日の記事には
奴等の態度がとても気分悪い。イメージ戦略として失敗してると思うのは私だけですか?
とあります。ちなみに、私の場合は、CFを観たことをきっかけに何度も生烏龍を購入しました。少なくとも私に対するイメージ戦略は成功だったわけです。残念ながら、最近は生烏龍自体が近所のコンビニの店頭から姿を消してしまいました。
また、深川 拓さんというセミプロの文筆家の方のサイトの3月3日の記事には、
あのCMの最大の欠陥は、舞台が販売会社そのものに思えてしまうこと。あんな馬鹿社員しかいない会社の商品、買いたいと思います?
とあります。そんな発想は全く浮かびませんでした。皮肉ではなく、想像力は素晴らしいと思います。
実際に会社勤めをしている立場から考えると、あんな社員は実在するはずも無く、だからこそ純粋にフィクションとして愉しめたのですが…
要するに、今回の打ち切りの件で、私にとって最もショックだったことは、「CFを観て不愉快に思う人の存在すらも、全く想像できなかったこと」なのです。人それぞれ、感性は異なります。それは仕方ないとしても、もう少し他者の感情を理解できる人にならねば、と思った次第なのです。